人にしかできないことに集中できる環境をつくる ~『ぬくもり』を支えるテクノロジーの力~

こんにちは。
株式会社エクセレントケアシステムでCTO(最高技術責任者)を務めている八十(やそ)です。
私たちが提供している介護サービスの中心には、常に「人」がいます。ご利用者様に寄り添い、笑顔を届ける職員一人ひとりの力こそが、私たちの介護の価値そのものです。
その大切な“人の力”をもっと活かすために、私たちはICT(情報通信技術)を積極的に活用し、介護の現場を支える取り組みを続けています。今回は、その挑戦についてお話しさせてください。
ICTって、結局なにができるの?
「ICT」と聞くと、少し難しく感じるかもしれませんが、決して特別なものではありません。例えば、以下のようなものがそれにあたります。
・スマートフォンやタブレットでの記録
・施設内のWi-Fi環境の整備
・カメラやセンサーによる科学的な見守り
・ケアデータのリアルタイム共有
・インカム(業務用無線機器)によるスタッフ間の即時連携
これらをうまく使うことで、手書きの記録が減ったり、スタッフ間の情報共有が瞬時に行えたりと、現場の業務負担を大きく軽減することができます。
特にインカムは、「○○さんの部屋に来てください」などの連絡を即時に共有できるため、移動や探し回る時間が減り、ご利用者様への対応スピードも向上しています。“言葉でつながる現場”を支える、大きな力になっています。

ICTがもたらす、科学的根拠に基づいたケア
ICTの導入は、単なる効率化が目的ではありません。一番の目的は、職員がご利用者様一人ひとりに向き合う時間を、質・量ともに豊かにすることです。
例えば、私たちの施設では『ライブコネクト』や『ANSIEL』といった見守り支援システムを導入しています。これは、ベッドに設置したセンサーで、ご利用者様の睡眠・覚醒、呼吸、心拍といった状態をデータで把握するものです。
これにより、スタッフは詰め所のモニターでご利用者様の状態をリアルタイムで確認でき、夜間の訪室回数を最適化できます。ご利用者様の穏やかな眠りを妨げることなく、かつ万が一の際には即座に対応できる「安心」が生まれました。
さらに、蓄積された睡眠データは、「夜間の睡眠が浅いようなので、日中の活動量を少し増やしてみよう」といった、経験や勘だけに頼らない、科学的根拠に基づいたケアプランの立案に繋がっています。

私たちの強みは「現場の声」が出発点であること
エクセレントケアシステムでは、ICTの開発や導入を、必ず現場の声から始めています。
「この記録、もっと簡単にならないかな?」
「どの業務に時間がかかっているか、一目でわかるようにしたい」
こうした現場のリアルな声をもとに、私たちICTチームが改善を進めています。日々のケア記録には介護記録システム『ケアカルテ』を導入し、入力のしやすさや情報共有のスピード向上に努めています。
また、「ナースコールが鳴っても誰が対応するかわからない」という課題に対しては、インカムの導入でスムーズな応答・連携が可能になり、「私が行きます!」という声がすぐ飛び交うようになりました。
「専門家がつくった立派な仕組み」を押し付けるのではありません。日々ケアにあたる職員自身が「これなら便利だ」「もっとこうしたい」と声を上げ、「みんなで育てていく使いやすい仕組み」を目指していること。それが私たちの何よりの強みです。

未来へ。ICTで介護の「安心」と「働きやすさ」を広げたい
今後は、センサーやAIの活用をさらに進め、転倒のリスクを事前に予測したり、体調の小さな変化を早期に察知したりといった、「予防的なケア」への挑戦も本格化させていきます。
こうしたICTの活用は、ご利用者様へのケアの質を高めるだけでなく、働く環境にも良い影響を与えています。業務が分かりやすくなり、チームでの連携がスムーズになることで、「働きやすさ」や「職員の定着率向上」にも確実につながっています。

最後に
ICTはあくまで道具です。どんなに便利になっても、人の手が生み出すぬくもりや、相手を思う心配りに代わるものではありません。
私たちが目指すのは、テクノロジーによって「人にしかできない、温かいケア」に、すべてのスタッフがもっと集中できる環境を創り出すことです。
これからも、介護の現場に徹底的に寄り添い、人の力を最大限に活かせる仕組みづくりに挑戦してまいります。この連載では、そんな私たちの取り組みや工夫を、わかりやすくお届けしていきますので、次回もどうぞ、お楽しみに!

株式会社エクセレントケアシステム 執行役員 / 情報システム部 部長(CTO)
システム開発や技術戦略の立案を担うCTOとして、2024年より現職。25年以上のエンジニア経験に加え、ITコンサルタントとして公共・医療・製造・介護分野の業務改善プロジェクトに多数携わる。 また、過去にはソフトウェア企業の取締役として事業推進を担い、経営視点を踏まえたシステム導入やDX推進に強みを持つ。現場と経営の両面から、持続可能な技術基盤の構築に取り組んでいる。