介護保険制度とその方向性② -マクロ的視点を持つことの重要性-
株式会社エクセレントケアシステム執行役員(「品質管理部」)の坂本と申します。EX Magazineを担当するようになって10回目の掲載となります。前回よりマクロ的視点にたって、介護保険制度や今後の改正に対してどのように対応していけばよいか、その中で品質をどのように考えていけばよいかについて、皆さんと一緒に考えるための検討材料の提供を主眼に述べてきました。その結果、介護保険制度や介護報酬請求の仕組みとその解説の回となりましたが、我々が介護サービスの提供とともにその品質を向上させるためには、介護保険制度や介護報酬請求の仕組みを理解し、そのうえにサービス品質は成り立っていることを認識する必要があることがわかりました。加えて、介護保険制度はすべての国民によって支えられているとともに、サービス品質維持・向上も同じであることを受け止め、毎日の業務に謙虚に向き合うことこそ、サービスの質向上につながると結論付けました。
そこで今回は、もう少し介護報酬体系そのものの役割を今回と次回(2月)の2回にわけ詳細に見ていきたいと思います。
「介護報酬体系」の概要
1)算定の基本的仕組み
介護保険制度で提供される介護サービスには、それぞれ価格があらかじめ設定されています。つまり、一般の財やサービスのように、それらの需要や供給のバランスで変化するわけではありません。そのあらかじめ定められた価格は「合成単位数」と呼ばれ、原則1単位=10円で計算されます。例えば、訪問介護サービスを20分以上30分未満(身体介護が中心)実施した場合、「合成単位数」は244単位(2026年1月現在)となり、金額に変換すると2,440円となります。これら合成単位数は、「サービスコード表」にまとめられ、訪問介護や訪問看護などの居宅介護サービスは「居宅サービスコード」、ケアプランの作成などケアマネジメントは「支援サービスコード」、介護老人福祉施設や介護老人保健施設などの施設サービスは「施設サービスコード」、定期巡回・随時対応型訪問看護介護や認知症対応型通所介護などの地域密着型サービスは「地域密着型サービスコード」、主に施設入所などの際に利用する食費や居住費に関する基準額は「食費及び居住費(滞在費)の基準費用サービスコード」に分けられています。
図表1には、介護報酬算定の基本構造を整理しています。介護報酬の算定にあたっては、介護サービスの価格にあたる「合成単位数」から「加算」や「減算」される場合があります。そのうち、「加算」は、当初想定されたサービスの提供体制(介護職員の配置や人数、提供時間)を超えて実施しなければならない場合、初回の実施や緊急時の対応などより多くの専門職がそのサービスの提供に関わることになった場合、より質の高い介護サービスを実施した場合などに合計単位数に加えられることになります。一方、「減算」は、指定事業所の都合でサービスの提供体制に満たない人数で実施した場合や指定事業所と同一建物に居住する利用者に介護サービスを提供するなど、当初想定されたほど費用がかからない場合は合計単位数から減らされることになります。例えば、訪問介護サービスを体重が重い利用者に対し、利用者・家族の同意を得て2人の介護士で入浴介護などの重介護を行った場合は、1回につき「合成単位数」の2倍を算定できます。また、同じく訪問介護サービスで指定事業所と同一建物内に居住する利用者にサービスを提供する場合は、1月につき所定単位数*1の85%で算定します。
その後、サービスの種類により回数や日数(1日あたり)、月数(1月あたり)を乗じて、図表1にある通り「合計単位数」が算定されます。その後、原則1単位=10円で計算し、「費用総額」が決定されます。但し、この「単価」は「地域単価」と呼ばれ、介護サービスが提供される地域の物価や経済状況等を加味し、介護サービス毎にその単価が決められています。ちなみに、図表1には、訪問看護の「地域単価」を示していますが、このように1級地から7級地とその他の8地域に分類され、それぞれ「地域単価」が設定されています。ちなみに、指定事業所は、利用者の自己負担1割の場合、この「費用総額」に0.9を乗ずることで、介護報酬の請求額が決定されます。
図表1 介護報酬算定の基本構造

出所:つしま医療福祉研究財団(2018a)*2より作成
2)地域密着型サービスにおける算定の特徴
ここでは、弊社が手掛ける地域密着型サービスを中心に、算定の特徴についてみていきます。地域密着型サービスは、介護給付9サービス、予防給付3サービスが設定されています。他の「居宅サービス」や「施設サービス」に比べ、在宅での生活を基本として、より身近なサービスの特徴から、小規模化と同時に1つのサービスに複数のメニューが設定(多機能型)されており、算定の方法も複雑化しています。その内容により、訪問サービス(24時間対応型)、多機能サービス、通所サービス、入所サービスに分けられます。
算定の特徴は、図表2にあるとおり、訪問サービス(24時間対応型)のように、緊急時の対応が中心となることから、要介護度別に1月単位の「合成単位数」が設定される場合や、多機能サービスのように、用意されている訪問介護や通所介護などのサービスの利用回数にかかわらず要介護度別に定額の「合成単位数」が設定されている場合があります。また、通所サービスのように、要介護度に応じて利用した時間ごと(例えば、6時間以上7時間未満や7時間以上8時間未満)に「合成単位数」が設定され、そのサービスの利用1回あたりで算定される場合や、入所サービスのように「従来型個室」、「多床室」、「ユニット型個室」、「ユニット型個室的多床室」といった規模別(認知症対応型共同生活介護の場合は、ユニット数に応じて設定)と、要介護度別に「合成単位数」が設定され、各施設1日利用につき算定されることになっています。
図表2-1 地域密着型サービスの算定方法①

図表2-2 地域密着型サービスの算定方法②

出所:つしま医療福祉研究財団(2018b)*3、つしま医療福祉研究財団(2018c)*4より作成
「介護報酬体系」と品質との関係
紙面の関係上、今回は地域密着型サービスに限って介護サービスにおける算定方法について整理しましたが、介護サービスの種類によってサービスを提供する時間に基づいて算定される場合や、提供する利用者の要支援・要介護度をもとに算定される場合もあります。また、別の介護サービスでは提供する時間に寄らず回数や1月当たりで算定されるなど、介護サービスを提供する指定事業者にとって、利用料を支払う利用者にとってわかりにくく算定の根拠が不明確なことが、介護サービスにおける算定方法の特徴といえます。
我々が介護サービスの品質を検討し向上を図るにあたっては、そのサービスを生み出す算定構造も含め議論していく必要があると考えます。次回は、今回のテーマの後半部分として、加算・減算項目とまとめ(介護報酬の機能と役割)について述べたいと思います。
<脚注・参考文献>
*1 ここで言う「所定単位数」とは、訪問介護サービス1回にあたり算定した「合成単位数」に、前述の2人の訪問介護職員等による加算や夜間早朝にサービスを行った場合の加算などの要素を加減した単位数を指します。
*2 つしま医療福祉研究財団(2018a)『介護事務講座テキスト1 保険制度のしくみ』ソラスト
*3 つしま医療福祉研究財団(2018b)『介護事務講座テキスト2 算定の方法』ソラスト
*4 つしま医療福祉研究財団(2018c)『介護事務講座テキスト4 サービスコード表』ソラスト
株式会社エクセレントケアシステム 執行役員 / 品質管理部 部長
川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部 非常勤講師、川崎医療福祉大学大学院 医療福祉マネジメント学研究科医療秘書学専攻 非常勤講師、一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟国家試験合格支援委員会委員(科目幹事)、公益社団法人岡山県社会福祉士会担当理事、第三者評価委員会委員(評価調査者・事務担当)、一般社団法人日本レセプト学会理事、社会福祉法人弘徳学園評議員、NPO法人晴れ アドバイザー
病院の事務、通所介護の生活相談員を経験、川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部医療福祉経営学科副学科長を経て、2024年より現職。福祉サービス第三者評価の評価調査者を担っている。医療福祉制度に関する学術論文多数発表。分担執筆『障がい福祉のすすめ』第5章(学文社)などの著書もある。川崎医療福祉大学創立30年記念「未来の医療福祉のあたり前を考える」論文部門最優秀賞受賞。博士(社会福祉学)・修士(社会学)ともに佛教大学、社会福祉士。