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介護現場のDXとは?~人手不足を解消し、働きやすさとサービスの質を両立させるカギ~

公開日:2025年8月13日
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いま、介護現場にDXが求められる理由

人手不足、業務の煩雑化、情報共有の遅れ――

こうした課題を抱える介護現場で注目されているのが 「介護DX」(デジタルトランスフォーメーション)です。

DXとは、単なるデジタルツールの導入ではなく、業務のやり方そのものを見直し、テクノロジーで“働きやすく、質の高い介護”を実現する取り組みです。

さらに近年では、「生産性向上加算」などの制度とも連動して評価されるようになっており、DXは現場改善と経営安定の両面で不可欠なテーマとなっています。

また、生成AI(例:ChatGPT)を活用した記録作成補助やFAQ対応も、DXの一環として注目が高まっています。

DXとは?介護業界で求められる「変革」の全体像

DXとは、仕事の進め方や組織の仕組みをデジタル技術によって根本から変えることです。

介護現場においては、以下のような成果が期待されています。

・業務の効率化とミスの防止
・介護職員の負担軽減と定着率の向上
・ご利用者様へのサービス品質の向上
・データ活用による予測型ケアの実現
・生成AIによる記録支援やナレッジの即時活用

つまり介護DXは、「働きやすさ」と「サービスの質」を同時に高める“現場進化”です。

IT化とDXの違いとは?現場の具体例で比較

介護現場では、すでにIT化が進んでいますが、「IT化」と「DX」には明確な違いがあります。

■ IT化の例(従来業務をデジタルに置き換え)

・紙の記録をExcel入力に
・電話の申し送りをメールに
・手書きの勤務表をパソコン管理に

■ DXの例(業務プロセスそのものを変える)

・タブレットでバイタルやケア記録を即時共有
・スマホアプリでシフトや勤怠を一元管理
・利用者データをAI分析 → 先回りのケア実施
・ChatGPTなど生成AIで記録文章を自動下書き

DXとは、「業務の仕組みそのものを再構築し、現場全体を進化させること」を意味します。

介護DXが急速に進む背景と、見過ごせない課題

介護業界がDXを加速している背景には、以下のような構造課題があります。

・慢性的な人材不足
・業務負担の増加と属人化
・サービスの質への期待の高まり
・生産性向上加算などの制度拡充

しかし、ツール導入だけでは解決できません。以下のような課題への配慮が必要です。

・職員ごとのITリテラシーの差
・新しい業務フローへの不安・混乱
・導入後の継続的なフォロー体制の整備

重要なのは、現場の声を反映した設計と、段階的で丁寧な運用サポートです。生成AIも「使い方を間違えれば負担増」になるため、目的に応じた活用が大切です。

DX推進のカギは「三位一体の連携」

DXは情報システム部だけでは推進できません。

現場(介護事業部)・情報システム部・経営層の三者が連携してこそ、真の変革が実現します。

【現場】課題や実務ニーズの共有、運用フィードバック
【情報システム部】ツール導入・設計・トレーニング・生成AI支援など
【経営層】方向性の明示、リソース投資、評価基準の設定

この連携によって、「生産性向上加算」の取得や、持続可能な現場運営にもつながるのです。
DXは一部門の効率化ではなく、全員で取り組む“組織の進化”です。

介護DXのメリット ―「人にも現場にもやさしい」変化

職員の働きやすさ向上
☑ 記録・報告業務の効率化
☑ チーム連携と情報共有のリアルタイム化
☑ 柔軟なシフト管理、オンライン研修の充実
☑ 生成AIによる記録文章や提案文の自動化

ご利用者様の満足度向上
☑ 状態の可視化による“先回りケア”
☑ チームでの迅速な対応
☑ 丁寧な説明と安心感の提供

組織・経営面の効果
☑ 業務の標準化と属人化の解消
☑ 加算制度の活用による収益安定
☑ 働きやすさの可視化 → 採用力・定着率の向上

DX推進に向けた情報システム部の取り組み

私たち情報システム部は、介護現場が安心してDXに取り組めるよう、次のような支援を行っています。

☑ 操作マニュアルや集合研修の実施
☑ ITが苦手な方への個別サポート
☑ ご意見・ご要望を反映したシステム改善
☑ 生成AIの導入支援と適切な使い方の教育
☑ フォロー体制の整備と継続的なサポート

DXは、私たちだけのプロジェクトではありません。「現場」「IT」「経営」が一体となり、未来の介護を共につくる取り組みです。

まとめ:介護の未来を切り拓く「DX」という選択

介護DXは、「職員の働きやすさ」「ご利用者様の満足」「経営の持続性」を同時に高める新しい挑戦です。そこに生成AIの活用も加わることで、介護の仕事はさらにスマートに、やりがいあるものへ進化します。

最初は小さな一歩で十分です。現場の声を大切にしながら、少しずつ、着実に進めることで、確実に“よりよい介護のかたち”が築かれていきます。

一歩ずつ、一緒に。

私たちは、皆さまと共に、未来の介護をつくっていきます。

Writer
八十浩文
八十 浩文 / Hirofumi Yaso
株式会社エクセレントケアシステム 執行役員 / 情報システム部 部長(CTO)

システム開発や技術戦略の立案を担うCTOとして、2024年より現職。25年以上のエンジニア経験に加え、ITコンサルタントとして公共・医療・製造・介護分野の業務改善プロジェクトに多数携わる。 また、過去にはソフトウェア企業の取締役として事業推進を担い、経営視点を踏まえたシステム導入やDX推進に強みを持つ。現場と経営の両面から、持続可能な技術基盤の構築に取り組んでいる。