未来技術シリーズ ~量子コンピュータ~

量子コンピュータとは
最近はAIが注目されていますが、未来技術として量子コンピュータも存在感を増しています。
これは「パソコンが苦手とする複雑な問題を、別の仕組みで解く新しい計算方法」です。将来は、介護や医療の現場にも関わってくる可能性があります。
仕組みと得意分野
従来のコンピュータは「0」か「1」を順番に処理しますが、量子コンピュータは多くの選択肢を同時に計算できます(量子の「重ね合わせ」「もつれ」という性質を利用)。
量子力学は直感では理解しにくい理論ですが、スマホやPCの半導体にもすでに応用されています。
※余談:SFの「パラレルワールド」は量子力学に着想を得たモチーフとして有名です。
また、特定の課題では「スーパーコンピュータなら数千年かかる計算を、量子コンピュータが数百秒で処理した」という研究報告もあります(※すべての計算で速いわけではありません)。

量子が特に力を発揮する分野は、次のようなケースです。
・組み合わせ最適化:何百万通りから最適な案を選ぶ
・分子シミュレーション:分子や原子のふるまいを高精度に再現
応用例としては、以下が考えられます。
・新薬候補の効率的な絞り込み
・宇宙規模の現象の再現
・都市交通やエネルギー消費のシミュレーション
現状と活用の広がり
医療から始まる実証
米・クリーブランド・クリニックでは、医療専用の量子コンピュータを導入。薬の開発や病気予測モデルに活用され、研究段階から現場での検証に進んでいます。
将来の応用可能性
ワクチン開発のモデルナ社は、IBMと連携し「量子計算+AI」で薬の候補を高速に絞り込む研究を開始。
さらに医療では、画像診断・放射線治療の計画・患者ごとの最適治療などへの応用が進行中です。
医療での応用が進めば、やがては介護業界でもデータを使った計画立案や運営改善に役立つ可能性が見えてくるかもしれません。
身近に使える環境
特別な機器を購入しなくても、量子クラウド(例:AWS「Amazon Braket」)で体験できます。ただし現時点では専門知識が前提で、一般利用にはもう少し時間がかかりそうです。

まとめ
量子コンピュータは「速さ」だけでなく、これまで諦めていた計算に挑める新しい方法です。商用利用はまだ研究途上ですが、インターネットやスマホ、生成AIが自然に広がったように、段階的に普及していくと見込まれます。

株式会社エクセレントケアシステム 執行役員 / 情報システム部 部長(CTO)
システム開発や技術戦略の立案を担うCTOとして、2024年より現職。25年以上のエンジニア経験に加え、ITコンサルタントとして公共・医療・製造・介護分野の業務改善プロジェクトに多数携わる。 また、過去にはソフトウェア企業の取締役として事業推進を担い、経営視点を踏まえたシステム導入やDX推進に強みを持つ。現場と経営の両面から、持続可能な技術基盤の構築に取り組んでいる。