介護現場の透明化と信頼構築⑤-福祉サービス第三者評価で実現する「質の高いケア」-
株式会社エクセレントケアシステム執行役員(「品質管理部」)の坂本と申します。EX Magazineを担当するようになって8回目の掲載となります。今まで4回にわたって、介護現場の透明化と信頼構築を実現するための方法の1つとして昨今注目を集めている「福祉サービス第三者評価」の考え方やその仕組みについて取り上げてきました。今回は、その最終回です。(第1回目の記事はこちら)
前回は2018(平成30)年改定*1によって見直された評価基準について、その前半部分を確認しました。今回は、残りの評価基準の改定内容と「福祉サービス第三者評価」の未来について述べたいと思います。
改定された評価基準について
2018(平成30)年の改定では、前回ご紹介した5項目の評価基準に加え、今回ご紹介する以下の2項目の評価基準が改定されました。1つ1つ見ていきたいと思います。
●利用者のプライバシー保護に配慮した福祉サービス提供が行われている。
この評価項目は、プライバシー保護等の「権利擁護」について、その規程やマニュアルの整備について確認する内容です。今回の改定では、その中で「権利擁護」について昨今の高齢者虐待や身体拘束に関するニュースに見られるように、その重要性が増しています。そこで、プライバシー保護に関する専門職としての姿勢や責務、それに配慮したサービス実施は今まで通りこの評価項目で確認するとし、「権利擁護」の部分については、評価項目31の「サービスの開始や変更の説明」や評価項目40の「標準的な実施方法の確立」へ移り、「権利擁護」の実現性についてより具体的に確認するようにしました。
●利用者に関する記録の管理体制が確立している。
介護サービスの提供には、利用者の個人情報の適正な取扱いが必要です。個人情報の取り扱いについては個人情報保護法があり、2017(平成29)年5月に改正され同時に、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」と「同 Q&A(事例集)」が改正されました。したがって、それらに沿った運用が行われているかを確認する評価項目となっています。
福祉サービス第三者評価制度の未来
今まで5回にわたって、福祉サービス第三者評価の仕組みやその意味、具体的な評価方法やその有益性について説明してきました。すでに、福祉サービス第三者評価を受審することでサービスの質向上や情報公開という責務を全うすることが可能であることは述べたところです。最後に、それ以外で2018年(平成30)年改定*1により説明された、介護施設の運営におけるメリットを述べていきたいと思います。
<メリット>
①助成金を受けるための加算項目
②監査等の確認項目
③3年単位の数値目標の設定
④施設ホームページ等への公表(分野によって加算)
⑤関係教育機関や人材センターへの情報提供
⑥施設整備費等の補助の際に重視
⑦社会福祉法人監査期間の延長と調査項目の軽減
⑧重要事項説明書への記載
⑨介護サービス情報公表システムにおける評価結果の掲載
もともと改正前は、①②についてはメリットとして説明されていました。特に、②については、以前の回でもお伝えしてきたところです。④については、昨今の障害者総合支援法の改正により、就労継続支援A型事業所のスコア制について、受審の事実を高く評価するようにしたり、発達障害児支援センターや事業所に追加となった「中核機能強化加算」について、受審を必須としたりするなど受審により加算されるといった傾向がみられるようになりました。このことについては、今後介護分野についても導入がされる可能性があると思います。
また、⑦の受審することで社会福祉法人の監査期間を延長することも考えられているようです。加えて、既に常識となりつつありますが、⑧にあるように重要事項説明書への記載を義務づけたり⑨の介護サービス情報公表システムへ評価結果を掲載したりするようになり、より受審か否かを広く一般市民に明確に公表するようにしました。
このように、福祉サービス第三者評価は今後、様々なメリットが追加されるとともに、対象となる各福祉サービス(高齢者福祉、障害者・児福祉、保育、救護(2018年から追加)、放課後児童クラブ(2021年から追加))も追加となることからそのメリットは倍々に広がっていくことになることが予想されます。そのような状況の中で、評価基準の定期的な改定と相まって、なるべく早く取り組むことで自施設・事業所のサービスの質が向上するとともに、めまぐるしく変わる各制度改正にもゆとりを持って対応できるのではないかと考えます。是非、みなさまの施設・事業所でも受審を検討して頂くとともに、受審のハードルが高いと感じられているのであれば、まずは評価基準を活用した自己評価だけでも導入されることをお勧めします。そうすれば、職員ひとり一人の見る目や考え方も変わるのではと確信しています。もし、福祉サービス第三者評価の受審や自己評価の導入をご検討であれば、坂本までご連絡頂ければ対応させて頂きます。よろしくお願いします。
<脚注・参考文献>
*1 厚生労働省(2018)『「「福祉サービス第三者評価事業に関する指針について」の全部改正について」の一部改正について』
株式会社エクセレントケアシステム 執行役員 / 品質管理部 部長
川崎医療福祉大学 医療福祉マネジメント学部 非常勤講師、川崎医療福祉大学大学院 医療福祉マネジメント学研究科医療秘書学専攻 非常勤講師、一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟国家試験合格支援委員会委員(科目幹事)、公益社団法人岡山県社会福祉士会担当理事、第三者評価委員会委員(評価調査者・事務担当)、一般社団法人日本レセプト学会理事、社会福祉法人弘徳学園評議員、NPO法人晴れ アドバイザー
病院の事務、通所介護の生活相談員を経験、川崎医療福祉大学医療福祉マネジメント学部医療福祉経営学科副学科長を経て、2024年より現職。福祉サービス第三者評価の評価調査者を担っている。医療福祉制度に関する学術論文多数発表。分担執筆『障がい福祉のすすめ』第5章(学文社)などの著書もある。川崎医療福祉大学創立30年記念「未来の医療福祉のあたり前を考える」論文部門最優秀賞受賞。博士(社会福祉学)・修士(社会学)ともに佛教大学、社会福祉士。